エステティックサロンを振り返って思うこと

入れ歯がうまく合わないと、ものを噛むバランスは大きく乱れる。
たとえば、左側が痛いために、右の奥歯ばかり使ってものを噛んでいると、ものを噛むための筋肉は偏った運動を繰り返すことになる。
そんな偏った動きを何カ月も何年も続けていけば、間違いなく何らかの障害が発生することになる。
一つの筋肉がアンバランスに動けば、関連するほかの筋肉がそれをカバーしようとして、また無理な動きをする。
そうして、また別の筋肉にも大きな負担がかかってくる。
そういうことが積み重なれば、体のどこかに症状が現れてきても不思議ではない。
私の父の場合、ものを噛むための岨噛筋のバランスの乱れが、岨噴筋の1つである側頭筋の正常な働きを阻害し、側頭筋のすぐ上の皮膚に型えている髪の毛に影響し、円形脱毛症になってしまったのだと思われた。
そこで、そのままにしておくと大変なことになるので、最終的にはやむな-残った歯を抜き、時間をかけて口の中の状態を安定させることにした。
すると不思議なことに、脱毛した部分に産毛のような白い毛が生えてきた。
いつしかその毛が黒くなり、その後、周囲とあまり変わらな-なるまでに回復していった。
歯に詰め物や被せ物をしたことのある人なら誰でも磐とがあるのではないだろうか。
そこで、「ちょっと変な感じがするんですが」と言うと、たいていの歯科医はこう答える。
「大丈夫、すぐに慣れますよ」しかし、この「すぐ慣れます」が曲者である。
たしかに、慣れることは慣れる。
それは、間違いではない。
だが、問題はどうやって慣れるかである。
これは、先ほどの私の父の例と同じである。
たとえば、片方の詰め物が少し高くて、うまく食べ物が噛めないとすると、その人は無意識のうちに反対側だけで食べ物を噛もうとする。
つまり、人体の防御システムが働いて、不具合のある部分の使用を避けようとするからだ。
初めのうちこそ、「なんか変だな」という感じがするかもしれないが、それも何日か経つうちに違和感を感じなのなってしまうことが多い。
これを称して「慣れた」というわけだ。
これは噛み方が変わったことを意味する。
そして長い期間にわたって筋肉が不自然な動きをしていると、どこかにしわ寄せが-るものである。
噛み合わせバランスの不調和が原因で惹き起こされる全身の症状には、痛、手足の冷え、目肱、慢性的疲労感、精神的イライラ、耳鳴り、難聴、肩凝りや頭記憶の1時的喪失、関節炎、麻痔などがある。
場合によっては不眠症、胃腸障害、はては高血圧、心臓病、痴呆性など、あらゆる病気を惹き起こす原因ともなりうる。
ひいては、不自然な噛み合わせが免役力を低下させ、癌や感染症の誘因となることも考えられる。
現に、私のところに相談に来る患者さんの中にも、合わない入れ歯や安易な歯科治療のために体の具合を悪くしたとしか考えられない人が数多-いる。
そんな人たちは、入れ歯を新しくしたり、適切な歯科治療をした結果、目陰が治まったり、血圧が安定したりしてくる。
私の父の場合は、噛み合わせバランスの大きな変化が、たまたま円形脱毛症という結果をもたらしたわけで、これは、私たち兄弟が、それまでに噛み合わせの問題に関心があり、原因がすぐに特定できたから不幸中の幸いだった。
だが、症状がもっとわかりにくい部分に出ていたら、どうなったかわからない。
ましてや、一般の人たちにとっては、自分の体の変調が、噛み合わせに起因しているとは想像もつかないことだろう。
そうなると、大半の人は、表面に現れた症状を治そうとして、内科や整形外科などに通うことになる。
そして、原因不明のままに大量に投薬を受けたり、無用な手術をされて、かえって症状を重くしてしまうこともある。
もちろん、体の変調が、すべて噛み合わせのバランスに由来するなどと言うつもりは毛頭ない。
また噛み合わせを治せば、すべての体の不調が治るというわけでもない。
しかし、どうしても体の変調の原因がわからないときは、噛み合わせの不調和を疑ってみる必要はある。
噛み合わせをおろそかに考えてはいけない。
1つの噛み合わせの狂いが、体の機能の低下や内臓の病気、ひいては精神障害さえも招きかねないのである。
私たちが現在、東京・中野で開いている歯科医院には、全国から重症の患者さんが集まってくる。
合わない入れ歯や無理な歯列矯正などによって、激しい頭痛、目防、肩凝りや腰痛に悩まされている人や、口が開かな-なってしまった人が次から次へと相談に来るのである。
中には、あまりの症状のひどさに、精神的に追い詰められてしまっている人もいる。
多額の費用をかけて矯正をしたり、入れ歯を作った挙げ句に、体を壊されてしまって、困り果てている人たちである。
どの患者さんも、体の不調の原因は歯の治療にあるらしいという見当はついているのだが、はっきりとしたことがわからない。
治療をした歯科医に相談しても、ほとんど相手にされない。
たとえ相手にしてくれても、症状の改善となると一向に時が明かない。
そこで口コミや新聞の記事を頼って、私のところにやってくるのである。
意図的にそういう方針で開業しているわけではないが、私の歯科医院は、言わば歯科治療の〟駆込み寺″のようになってしまっている。
歯のみならず体まで壊している患者さんの口の中を診断すると、すべてと言っていいほど噛み合わせバランスの調和が取れていない。
何をもって噛み合わせの調和が取れているというのかは専門的になるが、要するに、その人自身が本来持つ岨噛パターンと全身の筋肉の関係が調和しているかどうかということである。
私の患者さんたちは、噛み合わせを無視した歯の治療を受けたために、口の中だけにとどまらず、体のあちこちに歪みが生じてしまった人たちである。
多くの症例から、噛み合わせと全身のバランスが密接な関係にあることは明確なのだが、正しい噛み合わせの知識は歯科大学や歯科技工士学校では、現在でも教えていないので、歯の治療で体を壊す患者さんが増えているのである。
安易に歯を削ったり抜いたりすることによって、噛み合わせのバランスはあっという間に崩れてしまう。
いったん噛み合わせのバランスが崩れてしまうと、それを治すのは容易なことではない。
しかし、削って詰めるだけの歯科治療からは、その観点が完全に抜け落ちている。
だから大半の歯科医が、毎日せっせと歯を削り、病人を産み出しつづけているのである。
症状が軽い肩凝りくらいで治まっているうちはまだしも、噛み合わせの不調和が全身のバランスを崩して、やがては内臓の病気を誘発する可能性もある。
歯で命を落とすことはないなどと、たかをくくっていると、とんでもないことになる。
近年、働き盛りの壮年期に突然死をする人が増えている。
厚生省の調べでは、壮年期に死亡する人の八人に一人が突然死だという。
突然死の原因は、急性心臓疾患、脳卒中、急性呼吸不全、急性肝不全などだが、それらの症状が出る前に、頭痛や体のだるさなどの前兆を訴えているケースが多い。
東邦大学大橋病院副院長の吉井信夫先生は、遺族からの聞き取り調査などをして調べてみたところ、発病前一カ月にあった症状として、①頭痛、眼痛、顔面痛②首の痛み、凝り、肩凝り③目肱、耳鳴りを挙げている。すでにお気づきと思うが、これら前兆は、噛み合わせバランスが狂った場合にひじょうに多く見られる症状と完全に1致している。
朝日新聞に、こんな話が載っていた。
「中学時代からテニスのライバルだった友人H(五〇歳)が、茨城県のゴルフ場で急死した。

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